レッドと黒の膨張する半球体

英語タイトル: hemispherical red and black
中国語タイトル: 放屁蟲


<あらすじ>

1812年、ルイジアーナ州に突如現れた半球体は、静かに膨張を続けていた。
見るものをいちいち飲み込み、だから誰も見たことあるものはいなかった。
それなのに、住民はそのイメージが頭にこびりつき、涙しひざまづいて信仰の対象とし、水を飲んだ。


<演出ノート>

6月3日早朝。迷うだけ迷って、タイトルを「レッドと黒の膨張する半球体」にした。
もうひとつの候補は、「へこき虫、場所チョイス/ため息(Reservation)」というもので、概略はこうだ。

――「屁が止まらない。街でも飛行機でも女の家でも屁が出続ける。それは後ろの世界への挑戦状だ。もしくは心残りのため息だ。
すべてを宙に浮かせて、何が落ちるのか、僕は待つことにする。ブラックホールに吸い込まれる。違う世界へは続くか? 知るか。」

最初は「屁こき虫」としていて、尻込みして屁をひらがなにした。さらに、次は「へこき虫、場所チョイス」だったが、尻込みして
「ため息(Reservation)」を追加した。が、やはり「へこき虫」ではどうかと思った。僕はわりと無個性な感じの服を着ている女の子が好きなのだが、
そういう子は「へこき虫」では見に来てくれないのじゃないかと思った。でもよく考えるとそういう子は、新しいタイトルだからって見てくれるのかな。
見てほしいなと思った。へこき虫で行こうと3時間くらい前までは思っていた。ここ1ヶ月くらい、「へこき虫」しか思いつかなかった。

そういうわけで、ぎりぎりでタイトルを変えた。あらすじも完全にでたらめを書いた。なにをやろうか、ぼんやりとしかイメージがつかないなか、
なんだか気になったイメージが、赤と黒の半球体の物体だった。そして、これからが本当は本題で、でたらめをやらないといけない気がしている。
僕のイメージもでたらめに蠢いている。言及せざるを得ないのは(消極的な意味ではなく)、地震と原発。いまの僕はショックと怠け癖のせいで、
無機質な、でもなにかへの怒りでぶるぶる震えている物体を思い描いている。やりたいのは怒りかもしれない。だけどそれを限定してしまうのは
おかしいと自分に自分が思う。「かもしれない」だけだ。自分への保留――"Reservation"は予約ではなく、保留の意味でつけた。(2011/7)


 
© 神里雄大 フライヤー画 『群衆』

© 富貴塚悠太 2011 舞台写真(20枚)


Taipei Arts Festival 2012 (台湾)


© ワタナベカズキ劇中使用映像

<上演データ>

初演:2011年10月28日(金)〜11月6日(日) にしすがも創造舎 体育館(東京都豊島区)/フェスティバル/トーキョー11 主催演目
     [主催・共同製作] フェスティバル/トーキョー [助成] セゾン文化財団

台湾公演:2012年8月17日(金)〜19日(日) Wellspring Theatre〈水源劇場〉(台湾、台北市)/14th Taipei Arts Festival 正式招待作品


<クレジット>

[作・演出] 神里雄大
[出演]
(初演)内田慈 成河 武谷公雄 高橋ちづ 鷲尾英彰
(台湾)成河 伊東沙保 武谷公雄 高橋ちづ 鷲尾英彰

[美術] 杉山 至+鴉屋 [舞台監督] 寅川英司+鴉屋 [照明] 黒尾芳昭 [音響] 高橋真衣 [映像] ワタナベカズキ [衣裳] 天神綾子
[ドラマトゥルク] 野村政之 [記録写真] 富貴塚悠太 [演出助手] 菊川恵里佳
[制作] 急な坂スタジオ   [製作] 岡崎藝術座岡崎藝術座
 



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